コンプライアンスに関する助言をしていて、よく言われるのは、コンプライアンスが厳しくて、営業活動が阻害されている、という主張である。ただ。法令を守ることはすべての事業者に課せられているわけで、それによって営業活動が阻害されているというのはおかしな理屈である。おそらくその趣旨としては、はっきりとは法令違反とは言えない行為やどうみても法令違反とは思えない行為に対しても予防的にコンプライアンスがストップをかける行為のことを指すのだろう。これは難しい問題で、法律の専門家でも法律の解釈に意見が異なることはあり得るし、なにが法令違反になるのかを厳密に判断することは難しいかもしれない。ましてや法令違反になるのを防ぐため、となれば、どんな行為も該当することになってしまう。個人的にはそれを判断するのが経営理念なのだと思う。たとえば、顧客本位の経営を行うとしているのであれば、その行為が法令に違反するかどうかに関係なく、顧客のためになっているかどうかで判断すればいいのである。もし、顧客のための行為が法令に違反するような可能性があったとしても、それは法令を改正すべきだという位の気持ちでいいのではないかとも思う。(令和5年7月31日)