やっぱり国際分散投資

つみたてNISAの上位ファンドに国内株式型がかなり入っているのは少し意外でしたが、これからの投資環境を考えるとき、世の中のあり方にさまざまな変化が起きると言われています。ただ、その具体的な将来像はまだ見えていません。こんな時に、これから期待が大きく持てるような投資対象を見つけて、それに投資するというのはもちろんアリでしょう。でも通常期でもそうしたものを的確に見つけるのは難しいと思います。まして今回のように社会構造の変革まで叫ばれているときに、期待できる特定の投資対象をピンポイントで見つけることはかなり難しいことと言えるでしょう。投資に夢を持つのは決して悪いこととは言いませんが、安定的な資産形成を目指す立場からは必ずしもおすすめできません。社会構造の変化と言っても、幸いにして資本主義の存在自体が否定されているわけではありません。きっと、経済成長・利益成長を求めて資本が動いていくことは変わらないのです。だとすれば、安定的な資産形成を目指す上で、一番確率の高いのはやっぱり国際分散投資になると思います。(令和2年5月29日)

こういうときには

今回のコロナショックはおそらくリーマンショック以上の金融市場に対するインパクトとなるかもしれません。なにせ影響はこれから具体的に見えてくるわけですから。こんなときにはまず慌てて売ってはいけないということは広く言われるようになりました。また積立投資の人はそのまま続ければいいでしょうということもだんだん認識されるようになってきたと思います。でも投資対象はどうでしょうか?短気のリバウンド取りができるような銘柄を狙うという考えもあるでしょうし、私もその考えを否定はしません。いつ来るかわからない下げ相場を待っている投資家の話もよく聞きます。でも、今までの世の中が大きく変わったとかいう確証がない限り、投資対象を変える必要はないでしょう。やるとするなら、あくまで追加資金でやることだと思います。ただ、短期投資のつもりの思惑が外れて長期保有になってしまうこともままありますので注意が必要です。恥ずかしながら、私も今回の下げで短期リバウンド取りのつもりで、あるETFに手を出して、その後にさらに大きく下げて、今ではもう売るに売れなくなってしまいました。(笑)(令和2年4月30日)

時間を味方につけるために

長期投資の推奨ワードとしてよく「時間を味方につける」といわれます。長期的に見れば成長すると信じているものに投資しても、それが実際に値上がりするのには時間がかかるので、それを待てる余裕が必要だと言うことです。その通りだと思いますが、だとすれば、自分の投資するお金の時間がどれくらいあるかをしっかり見極めることがより重要となります。リーマンショックの時も相場回復に5年、そこに期待リターンを上乗せすればより長い時間が必要になりました。今回のコロナショックはもっと時間がかかるかもしれません。おそらく最近投資を始めた人たちは、この10年の上げ相場で、このあたりの判断を甘く見積もっていたのではないでしょうか?投資するお金の色分けとかよく言いますが、これはこの時間的余裕がどれくらいあるのかを判断することです。この下げ相場で売らなきゃいけないようなお金や積立を続けられないようなお金でやってはならないことはもちろんのこと、期待したリターンが実現するまでの時間も待てるお金でなければならないのです。だから、いろんな事態(特に最悪の事態)を想定して色分けすることが重要です。(令和2年3月30日)

インデックスファンドにおける信託報酬

ファンドの信託報酬の引き下げ競争が続いている。とうとう10年間信託報酬ゼロというファンドまで出てきた。これはこれで問題ありだと思うが、コストが引き下がることは、運用成績にはプラスに働くはずなので、悪いことではないように思えるが、そのこと自体を売りにするのもなんとなくおかしい。ファンドの評価はあくまで、運用成績によってなされるべきで、信託報酬の多寡によるものではない。信託報酬の高いファンドは運用成績には不利に働くと言うことに過ぎない。運用成績がいいのであれば、信託報酬がいくら高くても投資家にとっては問題ではない。そしてこの引き下げ競争はインデックスファンドにおいて顕著なのが特徴的である。インデックスファンドで低コストが謳われるのは、運用方法に大きな違いがない以上、低コストの方が有利だという考えである。これはこれで理屈ではあるが、そういうことなら別に低コストということにスポットライトを当てる必要はなく、インデックスとの追随率を比較すればいいだけである。(令和2年2月27日)

毎月分配型ファンドの苦しさ

毎月分配型ファンドの中で、基準価額が大きく下げている(たとえば5000円未満とか)ファンドが多くなった。基準価額が下がっていること自体は、運用成績によるものなのか、分配金の出し過ぎなのか、個々のファンドで理由は違うだろうから一概に悪いファンドと言い切るのは難しいと思うが、期間中のリターン以上に分配金を払うしくみは、やはり長期的には維持できないしくみなんだと思う。毎月定額分配をすることは、いわゆる定額引き出しと似ているが、定額引き出しで指摘されるデメリット(下がっているときに引き出す割合が多くなること)と同じことが毎月分配型でも言える。つまり、期間中のリターンに対して大きい割合を分配することになる可能性は、期間中のリターンが悪化しているときに高くなるのである。そしてこのことは結果としてトータルの運用リターンの悪化につながる。そしてそれは運用期間が長期になればなるほど大きな影響を与えるはずである。最近の毎月分配型ファンドの基準価額の下落傾向はそうした影響の現れではないかと思うし、投資家もそういう特徴をよく認識をして買うべきだろう。(平たく言えば長期投資には向いてない。)(令和2年1月31日)

なんだかよくわからん

来年度の税制改正大綱が発表されました。一般NISAの取り扱いがどうなるのかが焦点でしたが、2階建ての新たなNISAを創設することになったようです。現行NISAでは短気の株式投資が多いので、一定金額の積立投資をした投資家のみがNISAに参加できるように変えるというものです。もともと個別の株式投資における長期投資が根付いていない中で、NISAの投資対象として上場株式を認めていた以上最初からこうなることはわかっていたはず。現状の活用方法に不満があって、かつ制度としての期限が来たなら一般NISAは廃止すればいいじゃないですか。それをわざわざこのような形で延長するのは、やはり既得権としての非課税枠を手放したくないという不純な考えではないのでしょうか?積立部分の20万円の投資対象をどうするのか?ここまでして株式投資をNISAでやりたいという投資家がどれほどいるのか?制度設計をとってみても課題は満載のような気がします。そもそも、複雑な制度は根付かないという歴史上の教訓を生かしてないとも思います。もし、つみたてNISAとの選択制で、つみたてNISAを根付かせるための戦略だとしたら、それはそれで策士ですが。(令和元年12月25日)

出口戦略の重要性

最近は積み上げた資産をいつ引き出すのがいいですか?という質問に出くわす。僕らの仕事は、資産形成を上手に果たしてもらうことだと思っていたので、それを達成してくれたのなら、引き出すのはいつでもいいくらいに感じていたのだが、人生100年時代においては運用しながら引き出していくことが普通だと考えると、そうも言っていられないのだなと改めて見直しているところである。単純に考えても、積立時には有効とされる定額積立も、引き出し時に同様に定額引き出しをすることは逆効果とも言える。運用と引き出しは二律相反な面があって、あちらを立てればこちらが立たずになりがちである。無責任なように聞こえるかもしれないが、おそらく両方を満足するような答えはないのではないかと感じている。そうだとすると、どちらに軸足を置くか、つまり安定的に資金を必要とするか、あるいは運用収益の確保を重視するかである。安定的に資金を必要とするのなら、運用のロスを覚悟しても定額引き出しでいいだろうし、そうでないのならできるだけ運用収益の大きい時を選んで引き出していくというやり方もアリだとは思う。(令和元年11月29日)

業界平均は65%

金融庁では共通KPIとして、投資信託の保有顧客の運用損益別比率を公表している。今年3月末のデータによれば、65%の顧客がプラスのリターンをあげている。昨年3月時点では54%だったから、約10ポイント改善したことになる。私は金融機関の職員向け研修でこの数字をどう思うかとよく尋ねるのだが、いつも明確な返答は返ってこない。おそらく職員自身もよく認識していない人が多いのだろうと思う。こうした研修でよく感じるのは、「投資にはリスクがある」のだから「損をすることもあるのは当然ではないですか」と、むしろ「顧客に損することもあることを認識させるのが私たちの仕事です」というような考え方である。そのくせ、一方では「投資」は「投機」とは違いますと言っているのである。さらに使用している資料には「投資は投機と違って、成長をみんなで分かち合うものだ」と書いてあったりもするのである。「成長をみんなで分かち合っている」のに「損をすることがあるのも当然」というのは自己矛盾ではないかと思うし、少なくとも65%の投資家しか利益が上がっていない現状は自省すべきではないかと思うのである。(令和元年10月31日)

安定的な資産形成とはどういう意味か

金融庁では「安定的な資産形成」という言葉をよく使っているが、これは具体的にはどういう意味のだろうか?幾通りにも解釈できる言葉では、伝わるものも伝わらないと思うのだが。私的な解釈というか、多分そう言いたかったのだろうと推測するが、この言葉の意味は「損をしない」投資ということだと思う。つまり、業者にこれを求めると言うことは、すなわち、「客に損をするような投資をさせるな」と言うことだと思う。まあ、こうはっきりと業者に言えば、猛反発食らうのが目に見えているが、でもこれはまさに正鵠を得ていると私は信じるし、そのためにずっと活動してきた。日本に投資が根付かないのはリテラシーの問題とかではなく、まさに多くの投資家が投資信託で損をし続けてきたからだ。米国のように普通に投資信託を買って、普通に儲かるのであれば、日本でも簡単に根付いていただろう。確かに日本の投資環境はここ数十年苦しかったが、海外に目を向ければある程度の成果が得られたはずでもある。要は、よく言えば業者の努力不足だったのではないか?その努力こそがまさに顧客本位の業務運営だろう。(令和元年9月24日)

投資信託と株式投資

投資信託は、自分で銘柄を選んで株式投資をするよりも運用会社にお任せができるという点でやりやすい。しかし、通常の株式投資のように、短期的な相場の波に乗って利益を得ようとするような投資には向いてないとも言える。それは、しくみが複雑な分どうしても時間的に遅れがちになる。とくに、ブームに乗った投資で収益を得ようとする場合には、ファンドの募集開始時点ですでに遅れている可能性が高いし、その後も機動的に投資する観点からも遅れがちとなりやすい。俊敏さが求められるような投資には向いてないと言えるだろう。だから、そもそもそういうファンドには手を出してはいけないということになる。投資信託では、資金の流出入もファンドのパフォーマンスに影響を与えるし、ある程度じっくり腰を落ち着けて投資するような手法に向いている。投資信託を短期的な売買による利益追求の手段としている人もよく見かけるが、こういう意味であまりいい方法とは言えないし、そもそも、運用会社やほかの受益者に対する迷惑行為でもある。(令和元年8月30日)

年をとったら保有するファンドのリスクを下げること?

これからの人生100年時代、保有資金の寿命をも延ばすため、運用を続けながら資金を取り崩していくことが重要となる。この点に関してよく言われるのが、高齢になるとリスク許容度が低くなるから、投資するファンドのリスク度を引き下げるべきという理屈だ。ターゲットイヤーファンドなんかの設定理由もここにあるが、これは正しい考えとは思われない。寿命が近づいてきても若年の時と同じことをしていいとは思わないが、同じリスクを下げるのでも、投資ファンドでするのは効率的と思えない。たとえば、保有資産1000万円ある人が今よりとるリスクを半分にしたいと考えたとする。この場合現状のファンドの半分のリスクのファンドに乗り換えることと、500万円だけを現状のファンドに投資して、残りの500万円は預金にすることと資産全体でのリスク度は変わらない。なんでこんなことを言うかというと、極端にリスク度を下げたファンドは相対的にコスト負担が重くなって、期待リターンを得られないことが多いと感じているからだ。あとのケースで言えば、預金の500万円にはコストがかからないのもメリットでもある。(令和元年7月25日)

さわぎのあとで

2000万円問題で、得をしたのは誰だろうか?金融庁からすれば、良きにつけ悪しきにつけ、投資の必要性について広く一石を投じることができたことは間違いない。それにたきつけられたかはともかく、投資への関心が広がってきているとの新聞記事も見られた。投資を始めるなら早いほうがいいというのは私も同意するが、ここで集まった投資家に対して業界は正しい対応ができるのだろうか?昔と同じことをしやしないかが心配でならない、金融庁的には、これまで顧客本位の業務運営など業界の基盤整備に意を尽くしてきたのだろうが、まだ受け入れ体制が整っているとは思えない。金融庁自身、行政方針等でグローバル投資を謳いながらも、つみたてNISAの適用ファンドの三割が国内投資ファンドで、そのいずれものパフォーマンスが低迷している現状も、これから20年先への不安が拭えない。改革姿勢は共感するものの、なんとなく中途半端感があるのである。そうはいっても、年金事情など、もはや猶予のない状況なのだろう。となれば、自分のことは自分で守るしかないし、人なり業者を頼る場合には、自分のために本当に尽くしてくれる相手かどうかをよく見極めることである。(令和元年6月28日) 

 

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