金融教育ってなに?

金融庁が国家戦略として金融教育を推進すると発表されました。漠然といいことだなと思っていたところ、同僚から「金融教育って何を教えるの?」と聞かれて、ハタと考え直しました。確かに何を教えたらいいんだろう?たとえば投資詐欺に遭わないようにすることを教えるのは簡単ですが、そんなことは国家戦略にするほどのことではないでしょう。となれば、やはりお金の増やし方ですか?でもそんなことはこちらが教えてもらいたいくらい難しい話しです。投資なんて、もともと不確定なものだから自己責任原則なるものがあるわけで、不確定なものを不確定だよと教えることにどれほどの意味があるのだろうかと思う。おそらく金融庁的には、長期・積立・国際分散投資を身につけさせようと言うことなんだろうが、これとても世界全体が成長しないような時代が来た場合にも、正しい戦略と言えるかどうかはわからない。鶏と卵の話しではないが、国民が自信を持って投資を行えるためには、日本経済がしっかりと立て直されることの方が優先事項だろうなとは感じざるを得ない。(令和4年8月31日)

比較を容易にするために

最近金融庁は、KPIなどを通じて、あまたある投信の中から顧客が自分のニーズに合った選択をできるように努力をしているように見受けられるが、実際のところ効果が出ているとは言いがたい。たとえば、コストが運用パフォーマンスに与える影響が大きいとしても、高コストのファンドだから成績が悪いとは断言できない。そもそも日本の投信は関係当事者が多くて、そのそれぞれが費用を徴収する。コスト比較だけでも単純比較がしづらいしくみとなっている。しかも、運用には直接関係ない販売会社の取り分が非常に大きい。前にも言ったが、販売会社の費用は別枠とすべきなのである。販売手数料が投信のしくみに付随しているからおかしなことになるし、ファンドごとに異なる販売手数料などと言うことにもつながるのである。販売手数料は何のサービスに対する対価なのか?ファンドごとに異なる手数料はどんな合理的な理由があるのか?をファンドとは分けて明記させることである。特に後者を合理的に説明できる販売会社は実はいないのではないか?そうなれば自然と費用構成もわかりやすくなるし、顧客も比較がしやすくなる。(令和4年7月28日)

制度が定着するには

私ごとで恐縮ですが、去年60歳となって、加入していたiDeCoは積立停止となりました。そして今年から、加入年齢が65歳上限に引き上げられたのですが、そのままボタン一つで再開できるわけではなく、もう一度再加入の手続きが必要で、現状まだその手続きが終了してないので再開できていません。これってなんかすごく無駄なことだと思いませんか?たしかにいったん加入資格を失っている以上、もう一度手続きが必要です、ということなのはわかるが、加入手続き自体非常に面倒で、時間もかかる。すでに一回審査を終わっている人にもう一度同じ手続きをやれと言うのは、面倒くさがりの人にとっては、大きな障害だと思う。iDeCoにかぎらず、NISAにしてもつみたてNISAにしても開始時の手続きはかなりの負担がある。制度の抜本的な見直しをするにあたって、制度のしくみ自体の見直しに重点をおくのはしょうがないと思うが、じつはこうした手続き面にも見直す点が多くあると思うし、制度の定着にはむしろより重要だったりするのではないか。(令和4年6月30日)

長期に付き合えるファンドの条件

長期投資にふさわしいファンドの条件として、運用哲学や投資手法などとは別に考慮すべき点としては、そのファンドの値動きの特徴がある。たとえば、ブル・ベア型ファンドのように相場の調子のいいときは市場平均を(大きく)上回るが、そうでないときはその逆になるようなファンドの場合、その値動き自体に問題はないのだが(ファンドの目的通りの値動きをしている限り、それ自体に文句は言えない)、そのファンドに投資している投資家の投資行動については考える必要がある。こうしたファンドに投資している投資家は必然的に値動きに応じて売買が多くなる(短期投資になりやすい)。そして資金の流出入の多さはファンドのパフォーマンスにいい影響は与えない。ブル・ベア型や一部のテーマ型ファンドが長期で見ると決してパフォーマンス的に良くならないのは、こうした投資家みずからの投資行動による悪影響の面も大きい。長期で保有すればするほど損をすると言うことにもなりかねないのである。積立NISAの対象ファンドの基準に、資金の流入状況についての条件があるのもこうした点を反映している。(令和4年5月31日)

信託報酬の意味

信託報酬は運用管理に関する費用だから、これを一義的に受け取るのは、投信会社と受託会社である。販売会社は投信会社の業務を代行するとして投信会社から信託報酬の一部を受け取っている。類似ファンドによって信託報酬の多寡があるのは、多くの場合この代行手数料の部分の違いではないか。販売手数料が商品内容によって異なるというのは、百歩譲って納得するとしても、代行手数料が異なるというのはどうにも理解できない。投信会社の顧客に対する業務に商品内容の違いによって異なる部分はそんなにないはずだから。代行手数料が高めになっているのは、おそらく、販促費の側面があることは疑いない。それなら、販売手数料を高くすればいいだけである。また直販会社のノーロードファンド(販売手数料無料)の場合、販売にかかる経費はこの信託報酬から捻出されている。これとて、信託報酬を販売手数料込みで設定しているのなら、ノーロードであるといえるのかどうかあやしいとも言える。販売手数料は直接投資家から取るが、信託報酬は払っている認識が薄くなる間接徴収である。このこともこの問題をより複雑にしている。(令和4年3月31日)

変わるものと変わらないもの

「新しい資本主義」なるものの意味はイマイチよくわからないが、従来型の株主利益至上主義の資本主義が変革を余儀なくされていることは疑いがない。SDGs投資やESG投資もそうした流れの中から生まれている。要は社会の課題に応えてこそ、企業の存続に意味があると言うことであり、応えられないような企業は社会から存続が許されなくなると言うことである。当然企業には新たな負担が生じるだろうし、企業から様々なサービスを享受する市民の側もそのコスト負担について認識をしなければならない。日本においては残念ながらまだその認識の共有ができていないのではないだろうか?市民の側がそうした企業を明確に分別して、積極的にその活動を支援していくことが重要なのである。実はESG投資ファンドなどの役割は、その機能を肩代わりすることなのである。そこには短期的な収益の追求ではなく、そうした社会課題に立ち向かっている企業を見つけ出し、その企業活動を受益者とともに応援していくこと、そしてその反射的利益として投資リターンを得ていくことが求められているのではないか。(令和4年2月28日)

自己矛盾

「数ある投信の中から自分に合った投信をプロが選ぶ」というサービスに、投信の販売を手がけている金融機関は矛盾を感じないのだろうか?そもそも自分たちのやっている業務を否定しているとは思わないのだろうか?ファンドラップについては様々な点で違和感を覚える。ここまでして、投信という商品は販売しないといけないのだろうか?ファンドの集約化についてもなかなか進んでいない。もっとほかにやることがあるだろう。安定的な資産形成をするための投資信託であれば、そんなにいろいろな商品を作る必要はないし、そうなれば、顧客も選択に迷わないはずだ。選択肢を広げることがサービスになるのは、自分で選択できる顧客であって、そうでない顧客にとっては邪魔なだけである。そういう状況を自分たちで作ったあげく、選択できない人のためにプロが選択してあげましょうというのは、いくら何でも都合のいい話ではないだろうか?先月の予定分配金のファンドもそうだが、また本筋と違った商品が最近増えてきているような気がする。こんなことで投信が一般に根付くことにつながるとはどうも思えない。(令和4年1月28日)

分配金を売りにするのはやめよう

株式の配当金もそうだが、分配金が出るか出ないかはあくまで運用結果に依存するはずである。それをあらかじめ、保証ではないにしても予想として提示するというのはどういうことだろうか?そこにはなんらかの確実性が必要なはずである。それほど確実でもないのに、そういうしくみを前面に出した商品性というのは、投資運用を目的とした商品と言えるのだろうか?毎期収益が出たから、毎期分配しました(これとても、異なる考え方があるが)で、なんの支障があるのだろうか。もともと分配金の決定は基本的に投信会社の裁量である。収益がでたら分配します、でいいわけで、あらかじめ約束する必要はないのではないか。個人的な意見では、収益がなくても分配できるというルールに問題があると思っていて、ずいぶん前に提言したことがあるが、そのとき歯牙にも掛けられなかったことをよく覚えている。顧客にとって理解しづらいことやメリットにならないことは進んで改善するというのが業界のあり方だと思うが、なかなかそうならないのは歯がゆくてならない。(令和3年12月27日)

何のための費用か?

今回取り上げたファンドで一番納得できないところは、「何のための保証だったのか」である。たとえば保険であれば、何かがあったときにも「通常の生活」を送れるようにする機能であろう。運用における「通常の生活」とは「約束したとおりの運用をすること」であろう。つまり基準価額が下がったからといって、運用内容を変える必要のないようにするための保証のはずである。基準価額が下がって、これ以上の下落を抑えるために運用内容を低リスク運用に変えるのであれば、保証なんてする必要ないのである。「リスクを下げて基準価額が下がらないようにする運用」=「基準価額が上がらないようにする運用」である。基準価額が上がって、もう十分だからリスクを下げる内容に変えるというのならまだしも、基準価額が下がったからするというのでは、これからの回復は望めない。だからこそ、保証料を払って、そういうときにもリスクをとって、基準価額の回復を目指せるようにしてあるのではないのか?こういうファンドをリスク低減型という名の下に、低リスク指向の投資家に販売していたと考えるとやりきれない。(令和3年11月29日)

いいファンドの選び方

どれがいいファンドかという質問には答えようがない。ずっと考えているが、いい答えは見つからない。ほかのファンドよりもいいパフォーマンスをその人の投資期間において挙げるファンドを見つけるというのはほぼ不可能ではないかと思う。運用手法の優劣一つとっても判断は難しい訳で、そういう点では、ファンドの選択の成否の多くの部分が投資対象によってなされるとするなら、コストの低いインデックスファンドを選択すべきと言うことになるのだろう。ただキャリアの多くをこの業界に置いている身としては、その結論を受け入れるのには少し抵抗がある。だから何かいいアイデアはないかと考えるのであるが、残念ながら見つからない。一つ思うこととしては、ファンド単体で善し悪しを比較することは難しいなと、ならば運用会社で比較するしかないかなと思っている。同じ運用会社のファンドでも運用者個人によって成績に違いがあることはわかるが、それは置いたとして、運用会社ならその能力値は比較的把握しやすいのではないか?アクティブファンドに投資しようとするのなら、個々の運用手法よりも、自分にとって魅力を感じる運用会社かどうかで選択するのも一つの選択法かなと感じている。(令和3年10月29日)

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