ファンドラップのキモは投資判断の多くの部分をプロにまかせることができ、投資の初心者でも簡単に資産形成ができるというところである。しかしながら、金融業者と投資家はその関係において必ずしも共同体とは言えない。金融業者が投資家からコストを受け取るという関係はむしろ利益相反関係とも言える。金融業者に「おまかせする」することが、結果として投資家のためにならなかったケースは過去においていくらでもある。適切な投資判断ができない投資家が、「自分にとって最適なおまかせする相手」を正確に選ぶことが簡単なはずもなく、私もどちらが難しいかと問われれば後者と答えるだろう。結局は「自分たちがおまかせされるに足る業者です」という言葉を信じることになるのである。「信じた側が悪い」は一理あるが、それでは世の中は変わらない。信じてもらった側がその信用に足るだけの努力と誠実さで顧客に対峙することである。いま世の中のファンドラップの関係者はどれくらいその覚悟と信念を持ってやっているのだろうか。過ちは繰り返してはならない。(令和5年10月25日)